柔道整復師クラブホームページをご覧いただきありがとうございます。私達はこれまでインターネットを利用した情報交換や情報の共有化等を行い、多くの柔道整復師の皆さんと交流してきました。しかし、私達の活動の目的や意味を明確に御理解して頂けたかは疑問です。そこで少しでも私達の考えを御理解して頂く為に、私達が考える「21世紀における柔道整復師のあるべき姿」についてお話したいと思います。
これからの柔道整復師はどのような意識を持ち、どのような事を実践していけばよいのでしょうか? 21世紀に向け世界の医療は刻々と変革しつつあります。これから先、果たして柔道整復師は存在するのでしょうか? 柔道整復師一人ひとりの意識改革なくして柔道整復師の未来はないと私達は考えています。
以下に記載することは、柔道整復師クラブ会員の基本的理念であり、会員一同そのように向上出来るよう努力していきたいと思っています。また、一人でも多くの柔道整復師に、意識改革の必要性を御理解していただけたらと願っております。
(Evidence-Based Medicine 時代の到来)
Evidence-Based Medicine (EBM)という言葉を御存知でしょうか? この意味は、科学的根拠に基づく医療を推進し、科学的根拠のない治療を排除することを目的とした考え方です。この考えは現在世界的に急速に広がりつつあり、普及、実践され始めています。EBM の実践について簡単に説明しますと、診断や治療などの方針を決める際に、治療者の個人的な経験や質の悪い文献を参考にするのではなく、科学的根拠のある質の高い文献に基づいて治療方針を決定することを言います。もちろん個々の患者のニーズを最優先させることは言うまでもありません。
しかし現在の医療は、臨床的な診断・治療が個人の経験や慣習、もしくは根拠のない方法によって行われたり、権威者(大学教授など)の意見が安易に取り入れられることがあり、このことは決して患者の利益にも社会の利益にもなりません。
この EBM を全世界的に行う計画を「コクラン共同計画」といいます。これは1992年にイギリスから普及し、現在世界的に急速に展開している医療テクノロジー・アセスメントの国際プロジェクトです。この「コクラン共同計画」により世界中のあらゆる分野での臨床治験のシステマティック・レビュー(収集可能な論文全ての質の評価を行い、質の高い論文のみを統計学的に統合して、適切な臨床試験結果を導くこと)を行い、その結果はインターネット等を介して医療関係者や医療技術者、さらには消費者に届けられ、合理的な意志決定を行う材料になります。いわば近い将来、 EBM の考え方は医学・医療の歴史を変え、科学的根拠のない治療は認められない時代が到来することになるでしょう。
EBM の基準になるのは、最も科学的かつ信頼性の高い原著論文です。ただでさえ日本の臨床論文の多くは質が低いと評価されているのに、果たして柔道整復師の論文に世界で認められるものが存在するでしょうか? おそらく皆無に等しいでしょう。原著論文を持ちあわせていない柔道整復師が科学的根拠を持った職業と評価されるには無理があるのではないでしょうか。
(なぜ科学的でなければならないか?)
柔道整復術は果たして科学的な根拠を持っているでしょうか? 古来からの優れた伝統的技術であることは確かなことですが、残念ながら科学的根拠を持っているとは言い難いと私達は考えています。
柔道整復術は古来から現在に至るまで、同じ流派内で師匠と弟子との関係における技の伝承により後世に受け継がれ、また他の流派との議論を行わず、流派内での独自の用語を使用し、世の中に公表(論文化)する努力を怠ってきました。科学的であるとは「合理的・客観的であり再現性のあること」であり、現在の柔道整復師の学会において科学的論証と呼べるものはほとんど行われておりません。柔道整復術が科学的に実証され、学問として体系化されなければ、いつまでも「柔道整復師という特殊な部族だけが持つ独自の技術」という「井の中の蛙」的存在であり、また医学・医療の発展に貢献することにはならないと私達は考えています。
(21世紀における柔道整復師のあるべき姿)
柔道整復師の持つ臨床的技能は経験に基づく医学の "Art" の部分であり、外部の科学的根拠を基にした批判的検証・評価能力はまさに "Science" の部分であるといえます。この "Art & Science" の両者によってはじめて最良の医療が可能となると考えます。ですから、これからの柔道整復師は経験の積み重ねによる臨床的技能の修得だけでなく、自らの業務に関する科学的根拠(Evidence)を追及する姿勢が求められるのではないでしょうか?
Evidence の追及といいましても、ただ単に論文を読めば良いということではありません。Evidence の追及とは具体的に、1)最も効率的な方法(各種メディアや医学雑誌、インターネット、研究など)で最良の Evidence(科学的根拠のある効果的な方法や質の高い原著論文など)を収集し、
2)収集した Evidence の正しい評価や批判的検証を行い、
3)Evidence を臨床に応用する技術を身につけ、
4)臨床に応用したことを事後評価して研究課題を抽出し、
5)新たな最良の科学的根拠(原著論文等の共有財産)の蓄積に貢献することではないかと考えます。例えば、基本的なステップである「論文を読むこと」一つをとりましても、最初のステップである「正確な情報を検索収集する能力」が必要になりますし、どのような論文が科学的根拠のある論文かを「見極める能力」や、臨床疫学の知識を応用した「正しい統計処理を見極める能力」も必要になるでしょう。これらの能力の全てがなければ、批判的検証はおろか間違った情報を鵜呑みにするといった大変危険なことになりかねません。多くの柔道整復師は客観的理論でなく、独自の持論で患者さんに接しているのではないでしょうか?
Evidence の追及を正しく実践するためには、早急に方法論の確立や科学的思考を向上させる様々なトレーニングを行う必要があり、これには柔整教育機関や全国の柔道整復師会、学会関係者の果たす役割が大きく、またこれらの機関が問題に対する認識を持っていなければ、未来における柔道整復師の存在は絶望的であると私達は考えます。以上のことから、私達は決して単に多くの知識を持つことが「21世紀における柔道整復師のあるべき姿」だとは思っておりません。現在の柔道整復師に最も欠けている「施術に対して豊富な臨床経験と最良の科学的根拠の両方を上手に利用する能力を兼ね備え、生涯にわたり継続して自己研鑽に努める姿勢を持つ」ことが「21世紀における柔道整復師のあるべき姿」ではないかと私達は考えます。もちろん「患者の問題・ニーズを正確に把握し、信頼を得る人格を持つこと」が最低限必要であることは言うまでもありません。また、柔道整復師が医療の一端を担う者としての責務を果たすため、幅広い議論が必要であると考えます。
以上で私達の考えを述べさせていただきました。最後までご覧になって頂き本当に有り難うございました。御意見や御批判、御感想等、お待ちしております。また、頂いた御意見の中で有用なものがございましたら、ホームページ上で公開させていただきます。その際、御意見等は本名で公開し、E-Mail アドレスの公開は致しません。