頚椎疾患の整形外科的診断法と鑑別

著者: 永冶隆宏1)、白石洋介2)
編集: 柔道整復師クラブ
所属: 1)整形外科勤務柔道整復師、2)名古屋大学医学部解剖学第二講座研究生

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【はじめに】
 接骨院等に頚部疾患を持つ患者さんが来院された場合、症状が進行性のもの、安静にて症状が軽減しないもの、発熱を伴うもの、特に各種神経症状が存在する場合などは、速やかに整形外科専門医へ診察依頼すべきと思われます。その際に必要なのは、多くの頚部疾患に存在するリスクを見極め、神経症状が存在する場合は速やかに鑑別を行うことが出来る最低限の知識を身に付けることではないでしょうか。開業している柔道整復師はもちろんのこと、整形外科等に勤務している柔道整復師の日常の診療に少しでも役立てばと思い、最低限必要な整形外科的診断知識を簡単にまとめてみました。

【1、頚椎の機能解剖 5)6)
 頚椎は通常7つの椎骨からなり、C3〜C7 椎体の後外側面は頭側へ突出し鉤状突起と呼ばれ、上位椎体との間に一種の関節(Luschka 関節)を形成し側方へのすべりを制御している。Luschka 関節は臨床上重要であり、椎間板変性、狭小化に伴い、外側に骨棘を形成しやすい。また、一般的に C6 より頭側の横突孔内には、椎骨動静脈が通り神経根の前方を走行する。
 屈曲、伸展の動きの約50%は後頭骨と C1 の間でおこなわれ、残りの50%は比較的分担して動く(C5 - C6 が比較的大)。回旋の約50%は C1 (atlas 環椎) と C2 (axis 軸椎) の間で行われ、後頭骨との間で、いわゆるうなずき運動も行っている。残りの50%は C3 以下で各椎体間で分担して動く。側屈はすべての頚椎の動きで行なわれるが、純粋な動きとしておこるのではなく、回旋要素との組合せによる動きである。
 頚椎の軽い前彎は、生理的であると言われるが、消失7%、後彎2%という報告 9)や、30歳以下での前彎消失は必ずしも異常とはいえないという報告もある 5)

(頚部の作用筋 6)
 前屈: 胸鎖乳突筋 補助筋として斜角筋群、頚長筋、頭長筋など椎前筋群
 後屈: 板状筋、半棘筋、後頭筋群、僧帽筋、補助筋として頚部内在筋群
 回旋: 胸鎖乳突筋、補助筋として頚部内在筋群
 側屈: 斜角筋群、胸鎖乳突筋、補助筋として頚部内在筋群


【2、頚神経叢 cervical plexus、腕神経叢 brachial plexus、末梢神経 peripheral nerve の解剖 1)6)
[頚神経叢]
・頚髄の両側から出てくる前根 ventral radix(運動 mortor)と後根 dorsal radix(知覚 sense)で形成される混合脊髄神経である。前根と後根は椎間孔に入る前に硬膜管 spinal dura mater より離れ、椎間孔 vertebral foramen をでると前枝、後枝の2つの分枝に分かれる(後枝は一般に前枝より細いが C1, C2 は例外で、後頭神経など太く発達している)。
・C1, C2, C3 で頚神経ワナ cervical ansa を形成し、その上根 superior radix には舌下神経 hypogrossus nerve が伴行する。C2, C3 からは、副神経 accessory nerve に至る交通枝も出て、C3 からは頚横神経 transvers colli がでる。C4 からは鎖骨上神経 suprascapular nerve が、また鎖骨下筋枝の一部、横隔神経 phrenicus nerve もこの神経叢から出る。

[腕神経叢]
(1)神経根 roots
 頚神経は、頚髄の両側から出てくる前根 ventral radix(運動 mortor)と後根 dorsal radix(知覚 sense)で形成される混合脊髄神経である。前根と後根は椎間孔に入る前に硬膜管 spinal dura mater より離れ、椎間孔 vertevral foreman をでると前枝、後枝の2つの分枝に分かれる。

(2)神経幹 trunks
・神経は椎間孔を出て前斜角筋や中斜角筋などを貫通し、C5 と C6 の神経根は一緒になり、主に上神経幹 upper trunk を形成する。
・C7 は、ここでは他の神経根と一緒にはならず、中神経幹 midial trunk を形成する。
・C8 と T1 の神経根は一緒になり、主に下神経幹 lower trunk を形成する。

(3)神経索〜神経束 divisions 〜 cords
・上神経幹 superior trunk と下神経幹 inferior trunk は中神経幹に分岐を出し、それらが後側神経束 posterior cord を形成する。
・中神経幹 medial trunk も分岐を出し、上神経幹と合流して外側神経束 lateral cord を形成する。
・下神経幹は分岐を出した後に内側神経束 medial cord を形成する。

(4)末梢神経 branches
・外側神経束 lateral fascicule, lateral cord より外側胸筋神経、筋皮神経が分岐する。
・外側神経束と内側神経束 medialis fascicule, medial cord が一緒になって正中神経を作る。
・内側神経束からは内側胸筋神経、内側上腕皮神経、内側前腕皮神経、尺骨神経が分岐
・後側神経束 posterior fascicule, poserior cord からは胸背神経、肩甲下神経、腋窩神経、橈骨神経が分岐

※臨床補足:
  [頚神経叢由来の症状]
 ・副神経麻痺と胸鎖乳突筋の解剖学的関連は見逃しがちである。
 ・横隔神経は頚部の神経の比較的広い範囲の神経から枝が合流しているので、頚椎捻挫時に呼吸しにくいという訴えには耳を傾けよう。
 ・肩から背部、上腕、鎖骨から胸部までは、鎖骨上神経の支配であるが、肩こり様所症状とは鑑別しよう。
 ・鎖骨上神経が鎖骨そのものを貫通して走行する場合も希ではない(鎖骨上でチネルサイン陽性になる)。
 ・胸鎖乳突筋の中腹後面の圧痛やチネルサインは、この部の神経の分岐に特徴があるために発生しやすい。
 ・C3, 4 中心の頚神経が胸鎖乳突筋の中腹後面深部から蜘蛛の子を散らすように分岐していることを知ろう(解剖誌 62:109-148、1987)。

[腕神経叢麻痺 1)6)]
 ・上位型(Erb-duchenne type): 約80%の高頻度、上肢挙上、肘屈曲不能
 ・下位型(Klumpke-dejerine type): 手指麻痺が目立つ
 ・上下位混合型・中間型: まれ
 ・引き抜き損傷(Nerve root avulsion): Waller 変性にまで陥った場合、予後は悲観的(Ochoa 1980)
 ・Horner 症候群: 神経根の牽引が頚髄に及べば脊髄伝導路の障害を伴い、眼瞼下垂、縮瞳、眼球陥没が出現。
 ・C5 枝である肩甲背神経はとても細い神経であって、後斜角筋を貫いて背部に出ているので、絞扼点に注意しよう。


【3、知覚分布 6)
C5: 上腕外側(腋窩神経)
C6: 前腕橈側から母指示指中指の橈側(筋皮神経知覚枝)
C7: 中指
C8: 前腕尺側から環指小指(内側前腕皮神経)
T1: 上腕内側(内側上腕皮神経)

※臨床補足: 
[固有知覚領域 3)]
 ・三角筋部皮膚の知覚異常(主に痛みと知覚低下)は、腋窩神経の絞扼を疑う。Quadri lateral space をよく探り、tinel sign だけでなく、少々長く圧迫してその症状が増せばその疑いが濃厚になる。
 ・橈骨神経固有知覚領域: 母指と示指の指間部(オーバーラップあり)
 ・正中神経固有知覚領域: 示指の指先部掌側
 ・尺骨神経固有知覚領域: 小指の指先部掌側
・・・各神経は互いにオーバーラップしながらも比較的特定の部位を支配している。単独で支配している知覚域を固有知覚領域と呼んでいる。


【4、交感神経 1)4)
 頸部脊髄は交感神経の節前線維が出ていく中間外側核細胞 intermedio-lateral nucleus cell (通常胸髄、上部腰髄にある)を含まないために、胸部脊髄の中間外側角細胞より頸部節(通常、頚には上頚神経節、中頚神経節、星状神経節が存在する)へ上がっていく。

※臨床補足:
  [Barre-Lieou 症候群 4)]
 眼痛、視力障害等の眼症状、耳鳴り等の耳症状、めまいなどの一連の自律神経症状を Barre-Lieou 症候群と定義している。発生機序は頚部交感神経緊張亢進説(1926、Barre)、椎骨動脈循環障害説(1969、長島)、頚部軟部組織緊張亢進説(1955、Ryan and Cope)などの説に大別されるが、いずれも単独で発現するとは考えにくい。

[洞脊椎神経 4)]
 上肢にはいっていない神経で、大部分は知覚神経であるが、一部交感神経線維を含んでおり、硬膜や関節包、特に後側方部の線維輪表層と後縦靱帯に多くの終末枝を分布する。椎間板と周囲靱帯の損傷、頚椎不安定性などで刺激を受けると、後根から脊髄前角細胞、前根、肩甲周囲筋とつながる反射経路を賦活し、持続的に不随意性筋攣縮を生じ、関連痛を発生する。椎間関節の付近を通過することから、椎間関節捻挫などにより症状が発生することもある。洞脊椎神経の部位診断として、C3 は肩甲上部、C4 は肩甲上角、C5 は肩甲内側縁、C6 は肩甲下角に疼痛を発生する。


【5、頚上肢疾患の分類 1)3)5)7)
1、頚椎疾患
(1)外傷: 鞭うち症、捻挫、筋挫傷、骨折、脊髄損傷、寝違いなど
(2)変性疾患: 頚椎症、頚髄症、神経根症、頚椎椎間板症、頚部脊柱管狭窄症、頚椎椎間板ヘルニア、後縦靭帯骨化症、黄色靭帯肥厚症など
(3)腫瘍: 脊髄腫瘍、転移性腫瘍、神経鞘腫、髄膜腫など
(4)炎症: 強直性脊椎炎、リンパ腺炎、リウマチ性脊椎炎、、筋筋膜炎、化膿性脊椎炎、結核性脊椎炎など
(5)奇形: 上位頸椎奇形、斜頚、頚肋、アーノルドキアリー奇形、脊髄空洞症、Klippel-feil syndrome など

※臨床補足:
 ・C2, 3 に癒合椎が多発することが多く、これを触察で判断することは難しい。安易に一般的な上位頚椎の可動域に当てはめて、上位頸椎の運動性を評価することは戒めたい。
 ・神経症状は、圧迫されるから発生するのでなく、そのことで圧迫部位より末梢の循環障害が起こるから発生するということを念頭に置いてほしい。

2、腕神経部障害
 腕神経叢麻痺、胸郭出口症候群(thoracic outlet syndrome:腕神経叢、鎖骨下動静脈)、Entrapment neuropathy、Pancoast 腫瘍(肺尖部の肺癌)、腕神経炎など
3、肩部疾患
(1)外傷: 捻挫、腱板損傷、骨折、脱臼、など
(2)変性疾患: 肩関節周囲炎、上腕二頭筋長頭腱炎、石灰沈着性腱板炎、肩峰下滑液包炎など
(3)腫瘍: 骨嚢腫、巨細胞腫、骨肉腫など
(4)炎症: Entrapment neuropathy(腋窩神経、肩甲上神経)、リウマチ、肩関節結核、上腕骨近位骨髄炎、など
(5)奇形: Sprengel 変形、肩甲骨内側余剰骨など

4、上肢部疾患(上腕、肘、前腕、手指)
(1)外傷: 捻挫、骨折、脱臼、骨端症、末梢神経損傷(尺骨、橈骨、正中神経)など
(2)変性疾患: 変形性関節症、など
(3)腫瘍: 内軟骨腫、ガングリオンなど
(4)炎症: 腱鞘炎、上腕骨外側上顆炎、Entrapment neuropathy(肘部管症候群、手根管症候群など)、遅発性尺骨神経麻痺、リウマチ、結核など

5、交感神経 血管性疾患
RSD (reflex sympathetic distrophy)、血栓性静脈炎、Raynaud 症候群など

6、関連痛
7、中枢神経障害(脳血管障害など)
8、心筋梗塞・狭心症(上肢放散痛、胸背部痛、しびれ)
9、心因性(神経症、ヒステリー、鬱病など)


【6、神経障害の分類 1)5)
1、神経根障害(radiculopathy、root sign)
 神経根の圧迫や刺激により発生しほとんどが一側性である。上肢への放散痛、上肢のしびれ、上肢の dermatome に一致した知覚障害(知覚鈍麻)、上肢の myo-tome に一致した運動障害(筋萎縮・筋力低下)、腱反射の低下が一般的な症状である。知覚・運動・反射を分析することにより、障害高位を確定可能である。

※臨床補足:
[神経根障害における高位診断]
C5の障害
筋力低下(三角筋、上腕二頭筋)
反射低下・消失(上腕二頭筋反射)
知覚障害(上腕外側)
C6の障害
筋力低下(手関節伸筋群:長・短橈側手根伸筋と尺側手根伸筋、上腕二頭筋)
反射低下・消失(腕橈骨筋反射)
知覚障害(前腕外側から母指)
C7の障害
筋力低下(上腕三頭筋、手関節屈筋群:橈側手根屈筋と尺側手根屈筋、手指伸筋群:総指伸筋と示指伸筋と小指伸筋)
反射低下・消失(上腕三頭筋反射)
知覚障害(中指)
C8の障害
筋力低下(手指屈筋群:浅指屈筋と深指屈筋)
反射低下・消失(なし)
知覚障害(前腕尺側から環指、小指)
T1の障害
筋力低下(指外転筋群:背側骨間筋と小指外転筋)
反射低下・消失(なし)
知覚障害(上腕内側)

2、脊髄圧迫障害(myelopathy)
 頚椎症の骨棘や脊柱管狭窄、後方ヘルニアや OPLL などにより頚髄を圧迫して発症する。症状は、知覚障害(手指手掌全体の知覚鈍麻・しびれが主体で、体幹、下肢に拡がる)、下肢の痙性麻痺(膝伸展位でつま先を床にすりながら歩く痙性歩行、特に階段下りやジャンプが不可)、病的反射の出現(Hoffmann, Wartenberg, など)、下肢では足クローヌスが高頻度に出現、脱力、手指巧緻運動障害(myelopathy hand)、腱反射の亢進、ときに膀胱直腸障害(手術適応)など。

※臨床補足:
[Crandall の頚髄症分類 1)5)]
1)central cord syndrome: 脊髄中心部障害、上肢症状主体
2)transverse lesion syndrome: 横断性障害、上下肢の両側性知覚運動障害、最も多い
3)Brown-Sequard syndrome: 片側障害、運動麻痺と反対側の温痛覚麻痺
4)motor system syndrome: 前角前根障害、運動麻痺主体
5)brachialgia and cord syndrome: 上肢の放散痛、下肢の軽度痙性麻痺

[finger-escape sign 7)]
 myelopathy hand の場合、全ての指を内転位保持を行わせると、小指、環指、中指の順で保持が困難で外転する現象を finger-escape sign という。評価の基準にもなる。

3、radiculomyelopathy
 頚椎症性脊髄症などでみられる神経根と脊髄圧迫の混合障害である。上肢の神経根症状(上肢のしびれ、手袋状の知覚障害、上肢全般の筋力低下)に加え、下肢の遠位優位性知覚障害(靴下状知覚障害など)、痙性麻痺を生じる。神経根や前角細胞の圧迫は、障害脊髄レベルに反射弓をもつ腱反射を抑制し、同時に筋萎縮、筋力低下を示すが、その下位の腱反射はすべて亢進する。立位平衡機能も低下し、ロンベルグ徴候(目を閉じて立位を保つと体がゆれる:脊髄後索障害)が高率にみられる。

※臨床補足:
[頚椎椎間板ヘルニア(Herniation of the nucleus pulposus: HNP) 1)5)]
 頚椎の椎間板ヘルニアは、腰椎のヘルニアと同様に髄核組織が後方あるいは後側方へ脱出したものである。これによって頚椎部では頚髄、あるいは頸部神経根を圧迫し、疼痛、上肢の知覚運動障害、下肢症状(脊髄圧迫症状)などがおこる。 頚椎椎間板の形態は鉤椎結合(Luschka 関節)があるために特異的ともいえる。通常、頚椎椎間板の変性は、主にこの鉤椎結合部(椎間の後側方部)及び後方部分から始まる。当然、この部が抵抗減弱部となるから、ここを通って髄核組織が膨隆ないしは脱出する。これがヘルニアの実態である。好発部位は、C5/6、C6/7ついで、C4/5の順である。これらの部位は頚椎前弯のほぼ頂点に位置すること、および可動性の大きい部位に一致することが注目される。性差は男性にやや多い傾向がある。

[頚椎症(cervical spondylosis: CS) 2)7)]
 椎間板変性に伴う変化により椎間間隙が狭小化し、椎体後外側を形作っている Luschka 関節を含む椎体周辺に反応性骨増殖(骨棘: bone spur)を生じる。進行すると脊柱管や椎間孔の狭窄を生じ、神経根圧迫障害、脊髄圧迫障害等を生じる。また、外側の骨棘は椎骨動脈の圧迫も生じ得る。骨性変化は単純X線像で明瞭にとらえることができるが、頚椎不安定性の有無は頚椎前後屈位での機能撮影が必要である。好発部位は頚椎椎間板ヘルニアと同じで、C5/6、C6/7ついで、C4/5の順である。
 筋萎縮が著しい場合、頚椎症性筋萎縮症(cervical spondylotic amyotrophy)と言われるが、なかでも知覚障害が認められず、C5、C6の支配筋の著明な筋萎縮を起こす解離性運動麻痺(Keegan type dissociated motor loss)という特殊な病型もある。これは椎体後外側部の隆起が脊柱管内において前根や脊髄前角のみを圧迫したものと考えられる。解離性運動麻痺の場合、特に三角筋と上腕二頭筋の筋萎縮と筋力低下がみられ、上肢挙上と肘屈曲が障害される。筋力検査の際に注意することは、肘屈曲を前腕中間位で行うと比較的強い腕橈骨筋が働き代償してしまうので、前腕回外位で抵抗をかけなければならない。

[頚椎後縦靭帯骨化症(OPLL: ossification of the posterior longitudinal ligament) 1)2)]
 靭帯骨化症は日本に多く欧米(日本の1/10)では稀である。患者の両親、兄弟の約3割に診られることから、常染色体優性遺伝が示唆されている。後縦靭帯は椎体後面正中にあり、椎体後面とは椎体の上端、下端、正中部で線維性に結合する。これが肥厚、骨化して脊柱管の狭窄を生じ、脊髄を圧迫する。後縦靭帯骨化症 OPLL はとくに50歳以上の男性の第3-5頚椎レベルで最も多く見られる。分節型(椎間板レベルで途切れる)、連続型、混合型に分類される。一方、胸椎の OPLL は女性に多く、第4-6胸椎に好発し、OYL や頚椎 OPLL をしばしば合併する。組織学的には結合織内に骨化が見られ、その中に大小の骨髄巣を伴う。また黄色靭帯骨化症、前縦靭帯骨化を合併することも多く、DISH(全身性特発性骨増殖症)や糖尿病との関連が問題となる。脊柱管の狭窄が強くなると(40%以上の狭窄率)、直接の機械的圧迫や循環障害により脊髄症状が出現する頻度が高くなる。診断には単純側面X線が不可欠である。


【7、徒手検査法 6)8)
(神経根検査)
・Spurling test
 頭部を患側に傾斜したまま上から圧迫を加える。神経根の圧迫障害があれば椎間孔は狭窄して上肢に疼痛、しびれが放散する。
・Shoulder depression test
 頭部を健側に他動的に側屈させながら患側の肩を押し下げると神経根に張力が加わり、圧迫や癒着などがあるときに患側上肢に疼痛が放散する。筋の伸長痛も発生するので鑑別に注意。

(動脈検査)
・Barre-Lieou sign
 座位で頭部を左右に回旋(環軸椎間で大きく動く)させると、横突孔を通る椎骨動脈を引き伸ばしたり狭窄させる。めまい、ふらつき、吐き気などが発生すれば、椎骨動脈圧迫症候群が示唆される。
・Maigne's test (マイグネテスト)
 座位にて頭部を患側に回旋し、さらに伸展した姿勢で15〜40秒程保持させる。めまい、ふらつき、吐き気などが発生すれば、椎骨・脳底・総頸動脈の圧迫や狭窄が示唆される。

(硬膜内圧検査)
・Valsalva's Maneuver(バルサルバ検査)
 座位にて腹圧を上昇させるように力ませ、疼痛が発生すると陽性。あくまでも主観的な検査なので注意する。ヘルニアや骨棘、腫瘍などの脊柱管狭窄をきたす疾患が存在する可能性を示唆する。

(髄膜刺激症状)
・Kernig's test(ケルニッヒテスト)
 患者を仰臥位にし、片側の股関節と膝関節を屈曲させて下腿を診察台に平行にさせる。次に膝のみ伸展するように指示する。伸展不能や疼痛発生の際は髄膜刺激症状が示唆される。坐骨神経痛の場合も痛みを発生するので注意。

(錐体路障害検査:病的反射)
・Hoffman's sign(ホフマン徴候)
 患者の手を回内させ、患者の中指の末節骨を下から弾いて伸展反射を起こさせる。反射的に母指と示指を屈曲すれば陽性。錐体路障害が示唆される。
・Babinski's sign(バビンスキー徴候)
 足の裏を踵外側から小趾、母趾まで滑らかな棒状の物体でこする。母趾を背屈し、他の趾を広げれば陽性。錐体路障害が示唆される。ただし、幼児には正常で現れるので注意する。

(胸郭出口症候群 1)6)8)
・Morley test
 鎖骨上窩で腕神経叢を指で圧迫すると、圧痛、放散痛が生じる。腕神経叢の病変が示唆される。この圧痛点の目安は、まずはじめに鎖骨下動脈を触知し、その後方にあって鎖骨上縁に比較的近いということに注意。
・Adson test
 坐位にて両上肢を両膝に上に置かせ、橈骨動脈の拍動を触知し、頭部を患側に回旋させ、顎をあげて深く息を吸って止めるよう指示する。鎖骨下動脈が圧迫され、橈骨動脈の拍動が消失(完全な消失はまれ)すれば陽性で、前斜角筋症候群が強く示唆される。比較的信頼性が高い検査と思われ、陰性の場合は前斜角筋症候群の可能性は薄い。Roos 3分間上肢挙上負荷試験と併せて陽性なら殆ど確定的である。
・Wright test
 橈骨動脈の拍動を触知しつつ両上肢を外転外旋させると拍動が消失(正常でも30〜50%陽性)すれば肋鎖間隙での鎖骨下動脈圧迫が示唆される。過外転症候群と考えられていたが、実際は肋鎖間隙での圧迫。過外転症候群の主な起因筋は、前胸部肋骨から起始し烏口突起に停止する小胸筋であることを考慮しよう。
・Eden test
 患者に胸を張らせ、橈骨動脈の拍動を把握しながら患者の両肩が後下方に下がるように両手を引く。橈骨動脈の拍動が消失すれば肋鎖間隙での鎖骨下動脈圧迫が示唆される。
・Roos 3分間上肢挙上負荷試験
 信頼性が最も高い。Wright test と同じ肢位で手指の屈伸を3分間行わせる。手指のしびれ、前腕のだるさのため途中で手を下ろせば陽性。肋鎖間隙で腕神経叢が圧迫されることによる。鎖骨下動静脈圧迫でも陽性となり、この場合は上肢が蒼白、チアノーゼ様となる。

※臨床補足:
[斜角筋症候群]
 ・腕神経叢は、あたかも前・中斜角筋の間から出てくるように記載されていることが多いが、実際にはこれらの筋を貫通して出てくる。鎖骨下動脈が貫通するところでは、それぞれの筋の腱膜様組織の間を走行してくるので ”間を走行して”という表現が当てはまるかもしれない。
 ・頚部の椎前筋群も斜角筋も触診可能な筋である。胸鎖乳突筋の後縁にあって頚椎横突起から肋骨に向かう板のようにさわれる筋が前及び中斜角筋であり、胸鎖乳突筋の前縁にそって頚椎にぶつかるまでまっすぐ指を差し入れて、頚椎に指を押しつけたまま食道や気管を外側によせてやれば、椎前筋を触れることができる。


【参考文献】
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4)斉藤正也ほか: Whiplash Injury の後遺症、骨関節靭帯、3巻3号、p249-262、1990
5)森 健躬: 頸診療マニュアル 第1版、医歯薬出版、p47-98、1990
6)野島元雄訳: 図解四肢と脊柱の診かた 第1版、医歯薬出版、p101-123、1987
7)米田稔彦: 頚椎症性脊髄症、石川 斎ほか(編集): 図解理学療法技術ガイド 第1版、文光堂、p814-821、1997
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